新型コロナウイルスが夫婦のセックスに与える影響を考える〜夫婦カウンセリングの現場から〜

 

Photo by Emma Frances Logan on Unsplash

 世界的にコロナの感染拡大を避けるためにステイホームが叫ばれ、その影響は多岐にわたって出てきています。その一つが、D Vをはじめとする家族への影響です。他の記事でも言及しましたが、距離感が近くなり今までと違う家族の変化が問われています。

 その中で夫婦のセックスはどうでしょうか。統計など大きな数字は、大規模な調査ができるところにお任せして、私がお伝えできるのはあくまで夫婦カウンセリングを通して感じていることに限定されますので、そこはご了承ください。

 まず結論からお伝えすると、セックスレスでカウンセリングにお越しになられている方は、極端に改善したか、悪化したかの二極化した印象を受けています。では、何が違うのでしょうか。

 まず、改善に向かっている人たちの特徴を考えたいと思います。セックスレスの大きな要素として普段の仕事の忙しさが顕著に出ている夫婦は少なくありません。仕事が忙しくて、帰ってすぐ寝たいと思っている人にとってセックスは現実的には難しいのです。性欲を感じる前に睡眠欲に負けてしまっているのです。ただ、忙しさが一番大きなファクターで、在宅になり余裕ができて全員が改善に向かったかというとそうではありません。

 改善する、しないの分岐点は夫婦間葛藤の程度にありました。当然セックスレスになり、一方が不満を感じていれば喧嘩になるケースが多く、夫婦の葛藤が上がります。カウンセリングで、セックスレスへの改善を共有し、葛藤が下がっていたケースは顕著にこの期間に改善に進みました。一方、カウンセリング初期でまだ改善に対する合意が曖昧なケースや、セックスレスで不満を感じている人の怒りがあまりにも強すぎるケースは、この状況でさらにセックスレスへの不満が募り余計セックスが遠くなってしまいました。

 実際に、在宅勤務になり、セックスができる可能性が高いにもかかわらずできないという事態は、レスの傷に塩を塗るような状態になります。そうなれば、それが怒りとして出ることで関係が一層悪化してしまったようです。(実際にコロナの初期にカウンセリングにお越しの方は、その準備をカウンセリングで一緒に考えることができていたので傷は少なく済みました。)

 一方、セックスレスの原因に距離感の問題が大きかった夫婦は悪化したり、改善に結びにくかったように感じます。つまり、距離が近すぎて、家族としか見られなくなった、仲が良すぎてセックスが照れ臭くなったという夫婦にとって、コロナでお互いに家にいる時間が増えたことで余計に関係が密になります。結果、当然のようにセックスレスについては改善への速度を緩めてしまったようです。ただ、この手の夫婦は、上記のことで関係が悪化していない、または悪化が少ないのも特徴です。結果として、アフターコロナの現在、カウンセリングで再度立て直すことで、思いの外スムーズに改善への道に戻っていける手応えをカウンセラーとしては感じています。

 ソーシャルディスタンスという言葉が既に定着してしまいましたが、距離には物理的な距離と心理的な距離があります。セックスだけでなく、夫婦の多くの問題の捉え方として、物理的な距離が近すぎるか遠すぎるか、心理的な距離が近すぎるか遠すぎるか。その軸で、今の夫婦関係を一度見直してみと、見えてくるものがあるかもしれません。

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この記事を書いた人

心理士として、カップル、夫婦を軸に臨床活動、研究活動をライフワークとしています。。主に、不倫、セックスレスなどからの夫婦の修復や、意見がズレる時の葛藤解消を専門にしています。

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