コロナ時代のDVと虐待の処方箋②

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目次

〜対処療法と本質改善〜

 コロナ時代のDVと虐待の処方箋 問題提起編ということで、今コロナによる影響が家族にどう出ているのか、臨床の中で見てきているものを書きました。

 次に、対応策として、対処療法と本質の改善を分けることを提案しました。

では、まず対処療法について私が思っていることを書きたいと思います。コロナの影響で起こる家族の変化を単純に表現すると親密性の期待が高まることでのストレスといってもいいと思います。普段より物理的な距離が近くなることで、相手に求めること、相手のアラが見えることが増えること。家族以外との接点が遮断されることで、より家族に求めるものが増加します。結果、望んだものが得られないと葛藤が起こります。

 そうなってくると必然的にできることは、距離を置くこと、期待しないことになっていきます。ただ、ここで大切なのは「あくまで対処療法」と割り切ることです。これが夫婦関係、家族関係を悪化させない方法です。もっというと、修復不可能な状態にしないための方法と言っても過言ではありません、もちろん家族だから理解して欲しいこともあると思います。期待しないということは、期待する側の負担が一方的に大きくなることもあると思います。そういう意味では、一見期待する側にとって不利なような感じを受ける方も多いかもしれません。ただ、それも関係を壊さないための一時的な方略と考えて割り切るしかない事態だと思います。

とはいえずっと我慢なんてできないという人も多いと思います。そこで次の段階で目指すのは、本質的な解決です。

簡単な方法は、環境を変えることです。つまり今で言うとコロナの収束になります。え?と思う人も多いと思いますが、それが実は一番の本質的な解決なのです。コロナの影響で悪化した。それならコロナが収束したら元に戻るのは当然。それなら収束するまでできる限り傷を小さくしていく努力が、実は一番効率的です。

 ただ2020年5月1日現在で緊急事態宣言が延長されそうな動きがあります。国内外の多くの専門家がコロナ収束まで1年以上、あるいは数年かかると言う人もいます。そうなると長期戦になります。そうなると、いつまでも対処療法に頼っているわけにもいかないところがあります。そこで、徐々に、あくまで期待しすぎて怒りにならない程度に徐々に以下の方法を検討してみてください。

(*なお、以下の方法はあくまで一般論であり、より個別的な対応が必要な込み入った状況の方はオンラインのカウンセリングも含めてご検討ください。)

アサーション

アサーションとは、すごく簡単に説明すると、自分も相手も大切にしながら適切な自己主張をすることを指します。(*アサーションに関してはまた別途記事にして説明します。)

ここで覚えて欲しいのは、アイメッセージです。簡単に言うと、主語を「私は、」にして話をするということです。基本的に「あなたは。。。。」とか「あの人は。。。」とか表現すると、間接的に相手を非難しているメッセージになりかねません。多くの人が人を説得するために客観性を担保するために、「あのニュース記事では。。。」とか、「あの偉い人が言っていたけど」と言う表現を使いますが、ときにはその表現すら相手からすると批判されているように感じます。また、相手からすると、「だからなんの?」となりがちです。

だからこそ、「私は○○と思う。」「私は○○して欲しい」と自分を主語にしながら希望を伝えることを意識してみてください。

 もちろん、それをしたからと言って全てがうまくいくわけではありません。こじれている関係の中で、届きにくい時もあると思います。ただ、できることから少しずつと思えるのなら挑戦してみてください。

 同じゴールを作る

どんな話し合いもそうですが、お互いに納得したゴールがないと話し合いが進みません。当たり前のことだと思うかもしれませんが、多くの夫婦が共通のゴールの設定ができておらず、ルールを作り、結果、ゴールに納得していない方が守らなかったりして話し合の意味がなくなります。

ですので、何か問題を話し合いたいときには、ゴールをどう夫婦で共有していくのかが一番重要になります。本来カウンセリングでは、ゴールの設定にかなり時間をかけて丁寧に進めていきますが、今回はブログの記事なので簡略化してお伝えします。(実際に夫婦カウンセリングでは、夫婦二人のゴールが共有されれば、それだけで問題解決への道のりの半分は超えたと感じます。それぐらい難しいことなのです。)

まず、「私は、○○問題だと思っていて、なんとか解決したいから一緒に考える時間が欲しい」と提案してみてください。相手はすぐにいい顔をしないかもしれません。話し合って嫌な思いをした経験がある相手だったら尚更嫌な顔をしたり、逃げようとするかもしれません。でも、それでも喧嘩せずに、お願いという形をとって丁寧に説得することが重要になります。(これができない。不公平だと思うのでしたらカウンセリングにきてもらうしかないかと思います。)

その上で、話し合いの場で、「私は○○が辛いと思っているから、解決したい」「できれば○○のようになって欲しい」とできるだけ解決のイメージを伝えて、合意を取り、その方法を一緒に話し合ってみてください。その時にもう一つポイントは、思いやりを持つとか、愛情とか抽象的なゴール設定をしないことです。

 相手に感謝や労いを伝える

誰しもそうですが、望んだことにある程度応えてもらえないと、感謝は伝えにくいものです。特に、してくれたのはいいけど余計大変になったと言う場合は、余計に感謝は伝えにくいものだと思います。

 ただ、期待に応えて欲しいと願うならば、望みの10%でも応えてくれたらしっかり感謝を伝えて、「自分がしたことで喜んでもらえた」という経験を相手に持ってもらってください。関係がこじれてくると、お礼を言うと後で、「あんなにしてあげたのに他のことは多目にみろよ」と少しのことを恩着せがましく言われる。だから感謝を伝えたくないという人がいます。気持ちはすごくよくわかります。ただ、あなたが相手に変化を望むのなら、相手に感謝を伝えるということは避けては通れない道でだと覚えておいてください。

 以上の3つが、今記事を通して伝えやすいコロナへの本質的な改善の処方箋です。「なんで私ばかり努力しないといけないの」という声が聞こえてきそうです。もちろんその通りだと思います。ただ、もしあなたが今の状態を改善したいのなら、不満はいったん棚上げして頑張ってみてください。それでも無理な場合や、一方的すぎて受け入れられない場合はカウンセリングを検討してみてください。

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この記事を書いた人

心理士として、カップル、夫婦を軸に臨床活動、研究活動をライフワークとしています。。主に、不倫、セックスレスなどからの夫婦の修復や、意見がズレる時の葛藤解消を専門にしています。

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